国内

朝日新聞 スクープ扱いで「インドネシア慰安婦」でっち上げ

 朝日新聞が2013年10月13日付の朝刊1面トップで東南アジアの慰安婦問題を大々的に取り上げた。その狙いについて、東京基督教大学教授の西岡力氏が解説する。

 * * *
“スクープ”扱いの記事はこう始まる。

<旧日本軍の慰安婦問題が日韓間で政治問題になり始めた1992~93年、日本政府が他国への拡大を防ぐため、韓国で実施した聞き取り調査を東南アジアでは回避していたことが、朝日新聞が情報公開で入手した外交文書や政府関係者への取材で分かった>

 何と20年以上も前の話である。当時の日本政府が東南アジアの慰安婦問題の真相解明に後ろ向きだったという内容だ。

 これがスクープといえるのか。その横には東南アジア諸国は経済発展を重視し、途上国援助(ODA)を受ける日本政府との関係悪化を恐れ、政治問題化を避けたという解説記事が載っている。

 翌14日付朝刊1面でもインドネシアの慰安婦問題を取り上げる力の入れようである。

 当時、旧日本軍の慰安婦らの苦難を記録したインドネシア人作家の著作が発行される予定になっており、駐インドネシア公使は、〈著作が発行されれば、両国関係に影響が出るとの懸念をインドネシア側に伝えていた〉という。

 そのうえで公使の動きを〈文学作品発禁を促すものとみられ、当時のスハルト独裁政権の言論弾圧に加担したと受け取られかねない〉と批判している。

 全体を読めば、慰安婦問題の真相解明を求めたとされるインドネシア側に、日本政府が圧力をかけたと思わせる紙面づくりになっている。

 日本占領下のインドネシアでは、強制収容所から慰安所に入れられたオランダ人女性が強制売春をさせられたとして、戦後、旧日本軍元兵士を告発した。

 元兵士は軍事法廷(BC級戦犯裁判)で裁かれ、十数人が死刑を含む有罪判決を受けた。そうした個人的な犯罪はあったにせよ、旧日本軍や官憲がインドネシア人女性を組織的に強制連行したという証拠は見つかっていない。

 なぜ今、インドネシアの慰安婦が問題なのか。朝日新聞は次のように書いている。

<インドネシアでは90年代、民間団体の呼びかけに約2万人が旧日本軍から性暴力を受けたと申し出た。慰安婦ではなかった人もいるとみられるが、実態は不明だ>(10月14日付朝刊)

 インドネシアには最も多い時で、軍人、民間人あわせて4万5000人の日本人がいた。それに対して慰安婦が2万人とは常識では考えられない数であり、朝日新聞が実態を知らないはずはない。

 2万人が申し出たのは、当時、元慰安婦として登録すれば賠償金がもらえるという話が広がっていたからである。実際には慰安所で働いていない女性でも「何らかの被害にあった」と申告すれば慰安婦として登録されたという。

 朝日新聞が20年以上も前の話を蒸し返し、スクープとして取り上げたのは、2万人が慰安婦として登録されているインドネシアに、新たな火種を撒こうとしているとしか思えない。

※SAPIO2014年1月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
【伊東市・田久保市長が学歴詐称疑惑に “抗戦のかまえ” 】〈お遊びで卒業証書を作ってやった〉新たな告発を受け「除籍に関する事項を正式に調べる」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
《不動産投資会社レーサム元会長・注目の裁判始まる》違法薬物使用は「大きなストレスで…」と反省も女性に対する不同意性交致傷容疑は「やっていない」
NEWSポストセブン
女優・福田沙紀さんにデビューから現在のワークスタイルについてインタビュー
《いじめっ子役演じてブログに“私”を責める書き込み》女優・福田沙紀が明かしたトラウマ、誹謗中傷に強がった過去も「16歳の私は受け止められなかった」
NEWSポストセブン
告示日前、安野貴博氏(左)と峰島侑也氏(右)が新宿駅前で実施した街頭演説(2025年6月写真撮影:小川裕夫)
《たった一言で会場の空気を一変》「チームみらい」の躍進を支えた安野貴博氏の妻 演説会では会場後方から急にマイクを握り「チームみらいの欠点は…」
NEWSポストセブン
中国の人気芸能人、張芸洋被告の死刑が執行された(weibo/baidu)
《中国の人気芸能人(34)の死刑が執行されていた》16歳の恋人を殺害…7か月後に死刑が判明するも出演映画が公開されていた 「ダブルスタンダードでは?」の声も
NEWSポストセブン
13日目に会場を訪れた大村さん
名古屋場所の溜席に93歳、大村崑さんが再び 大の里の苦戦に「気の毒なのは懸賞金の数」と目の前の光景を語る 土俵下まで突き飛ばされた新横綱がすぐ側に迫る一幕も
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(右・時事通信フォト)
「言いふらしている方は1人、見当がついています」田久保真紀氏が語った証書問題「チラ見せとは思わない」 再選挙にも意欲《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、夫の音楽家・塩入俊哉氏(時事通信フォト、YouTubeより)
「結婚前から領収書に同じマンション名が…」「今でいう匂わせ」参政党・さや氏と年上音楽家夫の“蜜月”と “熱烈プロデュース”《地元ライブハウス関係者が証言》
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(共同通信/HPより)
《伊東市・田久保市長が独占告白1時間》「金庫で厳重保管。記録も写メもない」「ただのゴシップネタ」本人が語る“卒業証書”提出拒否の理由
NEWSポストセブン
7月6~13日にモンゴルを訪問された天皇皇后両陛下(時事通信フォト)
《国会議員がそこに立っちゃダメだろ》天皇皇后両陛下「モンゴルご訪問」渦中に河野太郎氏があり得ない行動を連発 雅子さまに向けてフラッシュライトも
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、経世論研究所の三橋貴明所長(時事通信フォト)
参政党・さや氏が“メガネ”でアピールする経済評論家への“信頼”「さやさんは見目麗しいけど、頭の中が『三橋貴明』だからね!」《三橋氏は抗議デモ女性に体当たりも》
NEWSポストセブン
かりゆしウェアをお召しになる愛子さま(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《那須ご静養で再び》愛子さま、ブルーのかりゆしワンピースで見せた透明感 沖縄でお召しになった時との共通点 
NEWSポストセブン